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【旋律の帝国】『調律の帝国』を読んで(結城司)

※メールマガジン「殺気ある文学」に掲載した文章です※

 この本を読み終えたとき、私の背中を血柱が走った。  私の夢は刑務官、もしくは裁判所事務官になる事だった。しかし刑務官にな るには体格、体力が足りず、事務官になるには頭が足りなかった。

 私は女なので仮に刑務官になったら女子刑務所へ配属される。しかしそれは 夢とは違う。私は男囚がうじゃうじゃしている刑務所で働きたかったのだ。バ カな私はそうはいかない事に試験直前まで気付かず、一か八かの可能性も捨て 試験を受けなかった。

 私が思い描いていた刑務官の姿は『調律の帝国』には存在しなかった。衝撃 だった。本当に優しい人情味を帯びた刑務官から虐める事に快感を見出す鬼の ような刑務官。まぁ人それぞれではあるが、刑務官の囚人に対する態度もマニ ュアル通りだと思っていた。それがあんなにも個性溢れているなんて…。私は 主人公のSよりもそれぞれの刑務官に夢中になって本を読んだ。

 この本に出てくる話はどこまでがノンフィクションでどこからがフィクショ ンかは分からない。でも私は単純だから書いてある事全てを鵜呑みにしてしま う。

 もし私が男で刑務官になれていたらどのような刑務官になっていたのだろう か。自分自身に興味津津だ。囚人たちを真面目に更正させられていただろうか。 囚人たちにナメられたりしなかっただろうか。出世できただろうか。

 この作品を読んで私は改めて刑務官になりたいと思った。と共に男に産まれ てきていたら、と悔やんだ。

 私はこれまで幾度か軽い犯罪に遭っている。覗き、拉致、痴漢…。そんな男 たちが許せないのだ。更正させてやりたいなんて上っ面の気持ちだ、本当は世 の中から排除してやりたいくらいだ。あぁ、そう考えると私は囚人たちをいた ぶる刑務官になっていたかもしれない。。

 この文書を書いていて、恥ずかしながら自分の中に眠っていたと思われるS 心が疼いてきた。囚人なんてみんな消えてしまえばいいのに。そのくらいの事 を思う。昔母に言った。「私裁判官になりたいの。悪い事をした奴らはみんな 死刑にしてやるんだ。」あの時の幼心は今でも変わっていなかったみたいだ。 私の成長した身体を初めてみたヒトは彼氏ではなかった。さっき少し触れた覗 きだ。あの時のショックは今でも忘れられない。今でも犯人を強く憎んでいる。 そんな私の頭の中には見沢さんの好きだったワーグナーの荘厳な旋律が流れて いる。

 強く思う。映画「地獄の黙示録」にも使われたワーグナーの「ワルキューレ の騎行」が流れるような刑務所で私が刑務官として働く、否、囚人たちを奔走 ( 大切にすること。かわいがること。)する事を…。

ゆうき・つかさ 見沢知廉ファンクラブ白血球團 運営委員


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