【白血球】見沢知廉ファンサイトについて
作家・見沢知廉氏が2005年9月7日、横浜市の自宅マンションから飛び降り自殺しました。
このファンサイトは氏の生前から開設を計画していましたが、突然の訃報を受けて内容もまとまらないまま開設することになりました。
見沢知廉氏の突然の死は、私にとっても非常にショックです。現代作家の中で数少ない好きな作家のひとりでした。
特に『天皇ごっこ』『調律の帝国』は現代文学史に燦然と輝く傑作です。
およそ12年の獄中生活は、精神的にも肉体的にも氏を追詰めていたように思われます。
それだけでなく、平成日本の社会的汚濁に、氏の清浄な魂は侵されまいとしたのかもしれません。
私は、この事件をきっかけに、見沢知廉氏へのいわれなき中傷や侮辱が再び巻き起こることを警戒し、
あるいは氏の業績が忘れ去られることを心配しています。
このファンサイト『白血球』では、正しく見沢知廉の業績を評価し、見沢知廉の思想を伝えることで、
この薄命の天才作家を追悼したいと思います。
2005年9月8日 朱斑羽
追記 私(管理人)は見沢知廉氏にお会いしたことは一度もありません。地方の一ファンに過ぎませんでした。
今回ファンサイトを開設すると、多くの方に賛同いただくと同時に、「もっと早く作ってくれてたら・・・」という
お言葉をいただきました。
もし、見沢氏の生前にサイトを開設したりファンクラブの提案をしていたら、ご本人も協力してくださった
かもしれません。悔やんでも悔やみきれない思いです。
サイトの内容を充実させるにあたって協力してくださった関係者の皆様に改めて御礼申し上げます。(10月15日)
見沢知廉を偲ぶ会で鈴木邦男氏にお会いした際、「どうして白血球なの?」と訊ねられましたので説明しておきます。
2000年に発行された見沢知廉のエッセイ集『日本を撃て』(メディアワークス刊)に『出獄記』と題して次のような記述がありました。
十二年前、まだ二十代初めの私は自分を神と信じていた。
新左翼から新右翼へ移ってすぐ最高幹部になり、新左翼セクト式のゲリラを指揮して成功し、
全能感に酔いしれていた。自分に出来ない事はないと信じ、次々とゲリラをした後は、要人テロさえ計画していた。
そこへスパイ査問事件が起きる。自分を神と信じる精神は、当然のように虫ケラの如く一個の生命を邪魔だと奪った。
そして捕縛の秋(とき)がきた。裁判の検察側証人で遺族である相手のお母さんは、
刑で罪を償った後は社会の為に尽くしてほしい、と述べられた。この言葉を背に、
私は十二年の独房の暗渠の拘禁生活に入ることになる。
いくらこう遺族の言葉があったとはいえ、一個の尊い生命を奪ったのだ。相手も人間であり、
そこにはやはり自分と同じく全能を希求したかも知れぬ一個の小宇宙が存在した筈だ。
自分が神であったのなら、相手もまた神であったのだ。その<神>を殺す事により、
果たして自分の中の<神>は、全能感は全うされたか。否、むしろ自らを神と信仰する全能感はその時、
もろくもガラスの城となって崩れたのである。
(中略)
私の深い絶望は、白い紙に赤い血が染みて行くように容赦なく、全能の神としての自己を否定し、
自己を人類の白血球、と規定した。
この文章を読んだとき、高校生であった私は稲妻で打たれたような衝撃を受けました。
見沢知廉は「白血球」である自己についてさらに次のように説明します。
類や種は、平常生活で全くの邪魔者である無用な畸形、変種をどういう訳か抹殺せず生かしてやり、
維持する。しかし、その意味も価値もない邪魔なだけの変種でも、ある非日常の場、
つまり私が親しんできた文学という場でなら類や種に貢献する白血球たりえるのではないか。
(中略)
ただ文学を書くという行為のみに、人間性の唯一の復活を見出したのだ。
このような見沢知廉の文学精神が、何人もの悩める若者を救ってきたし、これからも救うであろうという確信を
持つがゆえに、私の見沢知廉への想いもこめて「白血球」と名づけたのです。
私たちの人体に存在する白血球は、身体にウイルスなどが侵入したとき身を挺して攻撃します。
いわば生命体の「防人」のような存在ではないでしょうか。あるいは体内で悪い存在が発生したとき、
まさに「テロリスト」となってそれらを除去するのです。
激しい殺意を内包する見沢文学を語るのに、「白血球」という名が相応しいと考えています。
私(朱斑羽)は生前の見沢知廉氏とお会いしたことがなく、特別なコネもありません。
純粋な一ファンとしてサイトを開設し、ファンクラブの結成を呼びかけました。
ファンサイト「白血球」の運営にあたっては、ファンクラブの皆さんのご意見を仰ぎ、ご協力をお願いしつつ
コンテンツを増やして行きたいと考えています。ファンサイト自体についてはご遺族にも存在を認めていただいて
おりますので支障はないかと思いますが、著作権保持者側から何らかの要請があった場合速やかに対処します。
サイト維持については管理人がすべての権利と責任を有していますので、サイト内の全ての記事について
責任は朱斑羽にあります。掲示板も原則として朱斑羽が管理し、一般の社会通念に照らし合わせて不当と思われる
書き込みについては随時削除していく方針です。
ファンサイトの目的は「正しく見沢知廉の業績を評価し、見沢知廉の思想を伝えることで、
この薄命の天才作家を追悼」することにあります。将来的には見沢知廉のすべての作品を、すべての人がいつでも
読めるようになることを目標としています。そのために「白血球」では見沢知廉関連の出版物を積極的に宣伝していきます。
また、それらの宣伝については完全に自主的な、かつ非営利の行為であることを明記しておきます。
ファンクラブの活動の中心は、会員による見沢作品への書評をメインとしたメールマガジン発行ですが、
それらのメールマガジン掲載記事も随時「白血球」に転載していきます。
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